2020年6月6日(土)、世界的に流行りつつあるクラフト・ジンの蒸留所が、
なんと香港の街なかにあることを香港SAKE女の会会員が発見し、
早速、有志を募って見学に行って参りました。
場所は香港島のなかでも庶民的なにぎわいのある地下鉄Quarry Bay(鰂魚涌)駅のほど近く、
蒸留施設があるとは思えないオフィスビルのエレベーターを上がった6階にありました。

待っていたのは若い香港人の経営者ジェレミーとニック。
ジン好きの幼馴染でニックが法律事務所を辞めたのを機に、
ジュレミナーは二人でクラフトジンを作ることを決めたとのこと。
スコットランドで学び、ドイツから機材を取り寄せ、5か月前に蒸留を開始しました。
大手のウィスキー蒸留所の蒸留窯をミニチュアにしたような、
見た目にも可愛らしいポットを誇らしげに見せてくれました。

  

彼らの方針は伝統的なジンの特徴をしっかり守ること。
そして、少しだけ香港的なニュアンスを足すこと。
二人は幼いころからの飲食体験を思い出し、
香港らしいフレーバーにロンジン茶、クコの実、キンモクセイ、陳皮などを選びました。
これらを乾物にし、蒸留プロセスの後半に蒸留液をサッと通します。
試飲はストレートとジントニックにしたものをいただきました。
丁寧に作ってくれたジントニックは体中を一気に清々しくしてくれます。
香港のように湿度と温度の高い場所では理想的な飲み物だと思いました。
最後にふわっと鼻に抜ける香りや口に残るフレーバーに確かに香港がありました!
特にストレートで感じます。

 

 

最大のチャレンジは意外なことに酒税です。
香港では、日本酒やビールを含む醸造酒に税金はかかりませんが、
アルコール度数30%を超える酒類は100%の物品税が課せられます(全て2020年6月現在)。
少量生産のクラフトジンはコストが高めになる上に、税金で倍になります。
そのこと自体が参入障壁にもなっているのか香港にはジンの蒸留所はまだ二つしかないとのことです。
お酒の名前はNIP。
VIPの逆でNot Important Person。
中国名には「無名氏」という字をあてたそうです。
一番、重要なプロセスは?と聞くと「掃除、清潔に保つこと」との答え。
謙虚に酒造りに励む2人の若者です。

   

 

レポート:城宮 龍子(きみや たつこ)