◆◆ますます増加する和食対応に、日本産酒の注目度アップ◆◆

2023年11月3日(金)から5日(日)、香港貿易発展局(HKTDC)が主催する第15回HKTDC香港インターナショナル・ワイン&スピリッツ・フェア2023が香港コンベンション & エキシビションセンターにて開催された。
コロナ禍を経て、4年ぶりのリアル開催で、世界17カ国・地域から、500社・団体が出展。オーストラリア、フランス、ドイツ、イタリア、日本、中国本土、香港ワイン・スピリッツ輸出企業など11のグループ・パビリオンが出展。世界中の高級ワイン、プレミアム・スピリッツ、最高レベルのビール、中国やアジア産の高品質の伝統酒など、幅広いアルコール飲料が紹介された。

日本産酒は、国税庁が主催するジャパン・パビリオン内で10社。長野県ブース12社、岐阜県ブース7社の出展。そのほか、焼酎メーカー独自での出展や地元の日本産酒輸入元の出展など日本産酒ブースは非常に目立った展開となった。3日間の来場者は、中国本土、台湾、韓国のほか、インドネシア、マレーシア、ベトナム、カンボジア、ラオスなどの東南アジアからのバイヤーが多く、これらは日本産酒にとって潜在力の高い市場である証明でもあり、インド、アフリカ、特にナイジェリアからのバイヤーは、あらたな市場開拓の可能性といえる。

2008年に香港政府がワインに関する関税と管理統制をすべて廃止したあと、ワインの輸入総額は、2007年の16億香港ドルから2018年にかけて120億香港ドルと約7倍となった。2023年1月から9月の香港のワイン輸出は前年比41.6%の増加、3億USドル(約448億円)の増加となっている。コロナパンデミックはおおむね収束したといってもいいだろう。

◆日本酒市場、消費者の好みが成長中

このフェア開催当初は日本酒の出展がまだ少なく、「甘口で飲みやすいもの」を求める声が主流だった。4~6年前あたりから「より辛口のもの」へシフト。今年は「より米の旨味を感じる酒」「冷酒のみならず、お燗で飲める酒」を求める声がでてきた。日本酒を飲みなれた層が増え、より日本酒らしいものへの関心が強まっているといえる。決して消費者がマニア化しているのではなく、成長しているととらえられるだろう。

期間中の日本酒セミナーでも試飲提供された、阿武の鶴酒造(山口県)の「三好」は、華やかさはないが落ち着いた旨味を感じるタイプで、参加者からの評価が最も高かった。ちなみにこの商品、日本国内で開催された【美酒コンクール】の「リッチ&ウマミ部門」で金賞受賞という実績がある。
ヒエラルヒーの高さが上がれば底辺も広がる。愛好家層の広がりと同時に、初心者層も広がりがあり、フルーティーで甘酸っぱい、いわゆる「吟醸系」のブランドも注目度は高いようだ。とくに、コールドチェーンに注力した「生酒」などフレッシュさをキープした商品は人気が高く、高額商品のポテンシャルを十分に感じさせる。とくに「水の良さ=クリーンでフレッシュ=日本酒の魅力」と感じるバイヤーからは、商談の声が相次いだ。

今後の出展者の課題は、料理(“現地和食”に特化が筆者のお勧め)との相性と飲み方提案、特定名称ではない香味の伝え方、さらにメーカーのストーリー性を打ち出し、よりわかりやすい日本酒のセールストークをプラスしていくことだろう。
また、地元で活躍する日本酒講師による「長野県産酒の紹介」「精米歩合について」「伝統的日本酒製法」などの試飲セミナーがあり、いずれも満席で人気が高かった。ここに、レストランや酒販現場で役立つサービスノウハウのセミナーが加われば、より価値のある展示会となるはずだ。

◆注目の中国産ワインと日本産ワインの違いとは?
フェアの回を重ねるごとに、中国メインランドのワインが拡大し、品質の向上にも目を見張るものがあることを実感する。今年は、寧夏、四川、新疆からのワインブースが多数並び、その威力を見せつける形となった。
テイスティングすると、乾燥した気候から生まれる、凝縮してやや枯れた風味の昔ながらの味わいのものから、非常に洗練されたグローバル市場で勝負できるものまで多様だ。日本酒イベントの経験と幅広い酒類知識を持つケニス・リー氏は『ソムリエフォーラム – F&B業界におけるワインのトレンドを解読する』の後、「確かに中国ワインは勢いがあるが、主に濃厚な赤ワインが主流。日本ワインは、それと比べると、非常にバラエティが豊富。なにより、香港をはじめとしたアジアの都市から近く、日本国内のワイナリーを訪ねることができるところが魅力。アジア料理との相性も素晴らしい」と語った。クラシック世界のワインに太刀打ちするために試行錯誤を重ねる日本ワイン業界だが、こういった意見が出はじめていることにおおいに注目していきたい。

ジャパン・パビリオンの「ルミエール・ワイナリー」(山梨県)では、甲州の白ワインや甲州種のスパークリングの試飲希望が高いとのこと。「紹介から8年でやっと定着してきた感がある」と。日本ならではの伝統品種のさらなる紹介と繊細さな味わいが売りのポイントとなるだろう。

 

◆ジャパニーズ・ウイスキーの需要は引き続き顕著

世界的にジャパニーズ・ウイスキーの供給が滞っていることが知られているせいか、比較的おとなしめのブース出展ではあった。しかしここ数年、国内外のウイスキーコンペで数々の入賞を果たしている安積蒸留所/笹の川酒造(福島県)の出展は、ウイスキーマニアのみならず、さまざまなバイヤーの注目を集めた。人気銘柄の「山桜」は、すでに香港では流通も安定しているが、それでもフェア初日から商談依頼が相次いだ。
また、米をベースとしたライス・ウイスキー、泡盛をベースとしたアワモリ・ウイスキーなどクリエイティブな“和ウイスキー”や、日本らしいボタニカルを使用したジャパニーズ・クラフトジンも引きが強い。

◆長野県、岐阜県ブース
都道府県としてのブース出展は、いち早くGIに取り組んだ長野県とインバウンド観光でもあまた一つ抜けている岐阜県。福島県同様、中国への輸出規制が続いている長野ではあるが、酒類への注目度は実のところかなり高い。雪国、美味しい水、などのイメージがあり、透明感ある日本酒への興味が高いようだ。
『キャセイ香港国際ワイン&スピリッツコンペティション2023』にて、同県の春日酒造「井乃頭 純米」がBEST SAKEに選ばれたことも注目に拍車をかけた。「米の旨味がありながら、なめらかで飲みやすさもあるタイプ」の受賞は、あたらしい日本酒愛好家層の広がりを感じる結果でもある。また、橘倉酒造は、樽風味のあるバランスのいい日本酒「樽酒 プレミアム」を提案。日本国内では未発売だが、ワイン愛好家の多い香港市場を狙える商品設計だ。
インバウンドに強い高山がある岐阜は、米の旨味のある日本酒を得意とする地域。出展者は「甘口と辛口の違いがはっきり分かる試飲を用意しました」と消費者目線での準備も万全。人気の和牛の代表ともいえる飛騨牛と日本酒の“和ペアリング”提案もいけるのではないだろうか。

◆ライチの香りする芋焼酎、アルコール40度が人気
今回、焼酎の出展は少なかったが、一社独立ブースを出展する濱田酒造(鹿児島県)は、国内販売している「DAIYAME」(アルコール25%)の高アルコール版(40%)(国内販売なし)を紹介した。芋臭さや麹臭を一切排除し、まるで完熟ライチを思わせる印象的なフレーヴァーを前面に打ち出した商品。試飲したバイヤーからは「一度飲んだら忘れられない味わい」とすこぶる高評価。輸出に苦戦する焼酎業界の先駆けになるだろう。
また、地元でバー「MIZUNARA THE LIBRARY」を経営する遠藤真彦氏によるスピリッツ・セミナーでは、米焼酎3種、中国産蒸留酒3種の飲み比べが行われた。日本産蒸留酒の繊細さとクリーンな味わいに注目が集まった。

 

パンデミックの影響は少なからず残っており、出展ブースも例年より少なめではあった。しかしその中で、年を追うごとに、日本産酒への注目度は確実に高まり、質問や希望が少しずつ専門的になってきている印象だ。香港を中心としたアジア圏はもとより、世界中で、和食店のバリエーションが増えている。日本産酒は全くその需要にこたえていないのが現状。しばらくはその対応が先決だ。また、日本酒や焼酎、日本ワインは、ヴィーガン対応にも十分にこたえられる商品群。多様性を求められる市場にはフィットしていくだろう。

 

リポート
SAKE女の会代表理事 友田晶子